【文庫X】その販売手法が凄いと話題に!!
皆さんは文庫Xという本をご存知でしょうか。
著者・タイトル・出版社名を隠すという斬新な販売手法がネットで広がりを見せ、昨年大きな話題を呼びました。
※現在は写真のような様式に変更し、文庫Xの中身を公開して販売しています。
以前こちらの記事でも一瞬だけ紹介しました。
ネットでの拡散を皮切りに多くのテレビ番組でも紹介され、メディアの露出も増えました。
著者・タイトルをカバーで隠し、与えられた情報は書店員の書いたPOPのみ。
500Pを超える厚さ。
税込810円という文庫本にしては高い価格設定。
小説ではなくノンフィクションのドキュメント。
文庫本として敬遠される要素は十分すぎるほど孕んでいる。
それでも一度読んでみたいという好奇心を駆り立てられます。
これこそまさにマーケティングの鏡だなと感じました。
僕は縁あってこの文庫Xの仕掛け人であるさわや書店フェザン店・店長である田口幹人さんのお話を伺う機会をいただくことができました。
この田口さんという方もとにかく魅力的です。
本を愛する気持ち、仕事に向き合う姿勢、熱量、どれを取っても全てが素晴らしい方です。
出版不況と言われる昨今、書店員という立場で何ができるのか。
常に考え実行に移されています。
田口さんのことをもっと知りたい方はこちらの本を読んでみることをオススメします。
そんな田口さんが自信を持ってオススメするのが今日紹介する文庫Xです。
「殺人犯はそこにいる」
以下引用。
5人の少女が姿を消した。群馬と栃木の県境、半径10キロという狭いエリアで。同一犯による連続事件ではないのか?なぜ「足利事件」だけが“解決済み”なのか?執念の取材は前代未聞の「冤罪事件」と野放しの「真犯人」、そして司法の闇を炙り出す―。
「日本を動かす」というテーマで始まった本書の報道プロジェクト。
終息したはずの「足利事件」の矛盾点に疑問を抱いた著者・清水潔氏は、容疑者として逮捕・投獄されている管家さんが冤罪である可能性を見出し独自に取材を開始する。
すると当時の杜撰な捜査機関、司法の実態が浮き彫りとなり、「 北関東連続幼女誘拐殺人事件」の真犯人特定へと発展してゆく。
著者自ら体当たりで取材し、警察、検察、司法の闇を暴くノンフィクション物語。
著者の執念の取材は凄まじく、当時の目撃証言やDNA鑑定、司法制度、過去の冤罪事件に至るまで疑問に思う点は納得いくまで徹底的に調べ上げていきます。
その上で正しいと判断したことには、たとえ相手が権力者や強大な組織であっても真っ向から立ち向かう。この姿勢こそ本物の漢だなと感じました。
ついには著者の特定した真犯人像は国会でも議論がされるまでになりましたが、現在でも真犯人逮捕には至っていません。
ブランディングの重要性
もちろん本書の内容自体も素晴らしいのですが、文庫Xとして売り出されていなければ僕はこうして手に取ることもなく、おそらく一生この本に出会うことはなかったと思います。
プロモーションの仕方一つでここまで社会に影響を与えることができる。
改めて広告、マーケティングの力を感じずにはいられませんでした。
こうしてさわや書店は文庫Xを通じて販売売り上げを伸ばしただけでなく、自身のブランディングにも成功しました。
今後文庫Xに続く次なるオススメ書籍は自然と世間からも注目されることとなります。
所属する業界やビジネス形態にかかわらず、この文庫Xの一例は参考になる面が多々あります。
電子書籍の登場や人口減少にともない市場が縮小し、出版不況と嘆かれる昨今の厳しい状況下においても、できることはまだまだたくさんある。
この本からはそんな強いメッセージを感じました。